だから、俺は悪くない。

義父の言い分はこうだった。

この、駅前の土地。
購入時、今より人通りも多く価値が高かったが、他の地域の開発が始まり、ショッピングモールやアウトレットが建つと駅前周辺は人通りがどんどん減ってしまった。
そして、土地の価格が暴落したのだ。
本来は一億相当の物件だったが、今はその値段よりかなり低いうえ、会社も業績不振である。
それは、大手がこの業界に参入を始めて、価格破壊が起こり、我が家のような零細企業は太刀打ち出来ないからだ。

言い分は分かる。

だけど。
土地の暴落やら、大手参入やら…それよりまず、根本的な会社の経営不振が一番の問題だと思う。
この状況になるまで、家族の誰も立ち止まって考えなかったのだろうか。
このままでは、いけないと。

義両親と義姉が三人で関わっているのに、皆、それぞれ無責任な気がする。

義母が口を開いた。
「この会社は子供を大きくするために始めたからねぇ。
今後、どうしても続けないといけない物でも無いし、大手には勝てないからねぇ…。」

全て、人のせいに聞こえる。
地価の暴落のせい。
人通りが途絶えたせい。
大手参入のせい。
そして、子供を育てる手段だったから。

話し合いは続く。
Aが、
「この町では、デイサービスとか福祉関係の仕事を始めると、補助金が出るらしいし、結構儲かるみたいだよ」
Aは仕事柄、介護関係に全く知識がないわけでは無い。

義母も明るく振る舞う。
「そうだ、サンドラさん!福祉関係の資格、持ってたよね。そうなったら、サンドラさんにも入ってもらって…」

私はどんな顔をしていただろう。
確かに、福祉関係の資格はいくつか持っている。

「そうですね…」
口が勝手に動いたけど、気持ちはついて行かない。

その時、義姉が怒りの形相で、怒鳴った。
「勝手にすれば!私は知らないから!」
ドアを乱暴に閉めて、部屋から出て行ってしまった。

その後、義母から聞いた話によると、義姉の怒りの理由はこうだ。
今まで、自分が会社に携わって来たのに、弟夫婦と一緒にこの話を聞かされるとは、自分て何だったんだ。
本来なら、まず両親と自分だけでの話があって、しかるべきだった。
弟夫婦はその後に話すのが、本来の筋だ。

まぁ、その通りである。
しかし、それで勝手に出ていかれても、こっちだってどうすりゃ良いのだ。

融資を受ける際、義祖父母の家、田畑の土地がすべて抵当に入っているらしい。
しかし、田舎の田畑と古い家なんて、二束三文だろう…。

会社を閉鎖した所で、借金だけ残って、全てを失うのだ。

「本当はね、銀行にAを保証人に立てろって言われたの。その当時、まだAは中学三年だったんだけど。断ったわ」
義母がしんみり話した。

当たり前だ。
保証人になってるんなら、私が今まで知らないとか可笑しいだろ…。

結局、デイサービスがどうやら、という話は異様な盛り上がりを見せて、その日は解散になった。

もう、この家族。
どこまで本気で、どこまで冗談なんだか分からない。

とにかく、何かが、私の知っている世界とズレてる気がした。

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